今年の7月に待望の赤ちゃんが生まれるということで、現在絶賛パパ修行中だったりするのですが、とりあえずいろんな育児の本を読んで勉強しようと奮闘中です。

前回読んでみたのは、小児科医のぼくが伝えたい最高の子育てという本。

小児科医の先生が書かれた本だけあって、子供とそれを支える家族とりわけお母さんの心と体の健康に注目した良い本でした。

今回読む本は「学力の経済学」という本。

教育経済学者の先生が書かれたデータと証拠から科学的に分析した学習と子育てについて書かれている本です。
自分なりに重要なポイントを3つに絞ると以下のようになります。
・日本の教育は平等であることを重視するあまり、データーやエビデンスに基づいた教育論が育ちにくい環境である。
・個人の経験や良さそうではなく、エビデンスに基づいた学力を上げる方5選
・学力だけではなく生きる力を幼児教育から育むことが幸せに生きる秘訣である。
小児科医の先生が書かれた本と比べるとやや厳しい現実的な話題も出てきますが、役立つ情報も満載でした。
自分なりに理解したことをまとめていきますので良かったら参考になさってみてください(*’▽’)
【1】経験や良さそうではなくて、科学的根拠に応じた方法とは
まずはじめに、どんな子育てが良いかという問いに、絶対の正解はありません。
人それぞれに正解の教育法があり、どのような人生にしたいかも人それぞれで、学力を上げたいのか、お金持ちになりたいのか、健康に生きたいのかによっても選ぶべき教育方法は変わるでしょう。
また生まれながらの性格や能力、親や友達など影響など育つ環境、選べる資源によっても最適の教育法はかわります。
しかし子供に幸せになってほしいと思う気持ちはみな同じ。
そのような中でも、多くの教育方法が語られていますが、今回紹介するのはエビデンスに準じた教育の効果です。
科学的根拠(エビデンス)に準じた教育とは?

ある教育方法が本当に効果的といえるかどうかを、科学的にデーターを集めて研究し証明された手法を用いることです。
その証明には統計学的な考え方を用い、特にランダム化比較試験が証拠としての価値が高いとされています。
・ランダム化比較試験とは?
何かの教育法を考えるとき、究極的には同じ人のクローンに別々の教育法を同時に受けさせて、その影響を研究することが条件的に完全に平等と言えますが、
そんなことはできないので、極力条件が偏らないように選んだ集団を二つにわけて、ある教育法を行う群と行わない群にわけてその影響を観察する方法の一つがランダム化比較試験とよばれるものです。
このとき、「教育熱心な親とそうでない親」、「収入が多い少ない」、「住んでいる場所」などの条件が極力偏らないようにする必要があります。
・何をもって効果があると言えるか
このように1つの条件だけが異なるとほぼほぼ言える状況を作ったうえで、ある教育法をおこなった群と行わなかった群に学力や非認知力(※後述)の評価に偶然とは言えない差(有意差)が出ているときに効果があると判断されます。
もちろん有意差が出たからと言ってその教育法が全ての人に有効ではなく、それが逆効果を生む人もいます。
医療の世界では「エビデンスに基づいた」が当たり前
医療の世界ではこのエビデンスが特に重要視されていて、例えば今コロナウイルスが流行っていますが、その治療法として「インフルエンザの薬が効いた」とか、「HIVの薬が効いた」などの報告があがっていましたが、それはエビデンスレベルが低いとされます。
ただの一つの症例報告にすぎず、それを使わなかった場合その人はどうなったのか?ということが何も証明できないからです。
またその薬を使った人が裕福な人で、薬を使えなかったのは貧しい人であったというような二つの群を比較しても、「もともと健康志向に違いがあった可能性」や「免疫力の差」などもあり、薬の効果だと言えるかどうかわかりません。
そのための多くの人に参加してもらい条件の差がないようにするランダム化比較試験は証拠としての価値が高いというわけです。
日本の教育現場ではエビデンスに基づいた教育方法の研究は進んでいない。
書籍によると残念ながら日本の教育現場ではそういった科学的な証拠に基づいて有効と判断された教育はまだまだ広がってはいないそうです。
そもそも日本では平等的意識からそういった差をつけた教育を実施することに対する批判や抵抗感が強く、また仮にそのような環境の違いがあってもデーターを収集し、利用するということにも制限が強いようです。
そのため筆者が紹介しているエビデンスに基づいた効果的な教育も、その多くが海外のデーターを基にしています。
【2】エビデンスに基づいた有効な子育てに関する情報5選

①子供をお金でつってもいい
子供が勉強したり、努力したときにお金やご褒美を与えることが良いことかどうかについては議論がありそうなテーマですよね。
一般的なイメージでは、お金で釣ることはよくないとされているのではないでしょうか、個人的にも子供がお金をもらわないと動かない打算的な人になったらいやだなとすこし考えてしまいます。
でも作者が提示するエビデンスによるとお金やモノで釣ることは悪いことではなく、勉強のモチベーションを高め、成績を向上させることに有効だったそうです。
・純粋な勉強をしたいという意欲に害はないか
また純粋に勉強したいという気持ちをそいでしまうのではないかという疑問も、研究によれば変化はなかったとされています。
もちろん人によっては「ご褒美があるからやる、ご褒美がないからやらない」というような状態になる可能性もあります。でも勉強にしろなんにしろ、出来るようになって、褒められてという成功体験があれば、おのずと好きになる可能性も高いと考えます。
純粋に勉強したいという思いがない俗物的な人間としては、多かれ少なかれ勉強することは自分を助けてくれる、自分のしたいことを実現させてくれるという成功体験をつませてあげることは大切だと思いますので、匙加減を間違えないように取り入れたいと思いますね。
・お金の教育を同時におこなう
またお金を与えられた子供たちがそれを無駄遣いしたり、お金の使い方が荒くなるのではという心配もあるかもしれませんが、同時にお金の使い方などの教育やしつけを行うことでそれらを回避することができているそうです。
与えられたお金を計画的に使ったり、貯金したり、運用するなどのお金のリテラシーも年齢に応じて行うことも考えたいですね。
▶結果ではなく努力したことにご褒美を与えることが有効
ご褒美を与えるタイミングも重要で、良い点をとったらご褒美をあげるという子供たちより、努力をしたことにご褒美を与えられた子供の方が成績の伸びがよかったようです。
②ほめる教育もやり方しだい

一般的に褒める教育が良いということが多くの場所で言われています。先日読んだ小児科の先生の本の中にも褒めることの重要性、自己肯定感を高める効果などが書かれていました。
しかし本書ではこれに関しても、注意点が示されています。
正しい褒め方のポイントは
・頭がいいと能力を褒めるのではなく、努力したことを褒める
・テストで良い点を取ったことを褒めるのではなく、努力したことを褒める
努力したことを褒められた子供は、難問にぶち当たったときも努力が足らなかったと反省し粘り強く問題に取り組めたとのこと。
逆に間違った褒め方を続けると能力のないナルシストを生む可能性があるようです。
③ゲームは1時間までなら影響ない

ゲームをすると子供が暴力的になるのでは、勉強ができない子になるのではという疑問も大きなテーマです。
示されたデーターからは
・1日1時間までならゲームが教育に影響を与えることはない。
しかし2時間以上ゲームをした場合学力低下の影響がみられたとのこと。
また無理にやめさせたとしてもスマートフォンやテレビをみる時間が増えるだけで勉強をする時間は増えなかったそうです。

④実も蓋もないが環境は大切

書籍中に勉強方法の不都合な真実として東大生の親の年収の平均は1000万円というような記述がありました。親の年収や学歴と子供の学力には関係があるというのは身もふたもない事実のようです。
- 親や塾の教師などが子供が勉強するのに傍らについてみてあげられ、統計的に優位な差がうまれるとのこと。
- また都市部の人気の学区に転向し、教育熱心な環境に子どもをおくことで相乗効果がうまれるとのこと。
- 子供への教育的な投資は株や債券への投資より効率が良く、小さいころときにおこなう投資ほど資本収益率がよい。
田舎で育った僕なのでこういうことにはピンとこないのですが、お受験、学区などを気にして幼稚園から奔走する熱心なご両親がいらっしゃるのもそういうデーターに基づくところなのでしょう。
⑤勉強しなさいは時間の無駄
小児科医の先生が書かれた本にも勉強しなさいと声掛けをすることは否定的にかかれていましたが、こちらの本でも勉強しなさいと声をかけることは意味がないとされています。
一方で子供に寄り添って勉強を見てあげることには意味があることが示されており、苦手科目を克服するためには同性の親、つまり男の子には父親が、女の子には母親がそばについてみてあげることが良いと示されていました。
【3】生き抜く力を持ったこどもを育てるために

この本では学力の大切さとそのエビデンスに基づいた方法が紹介されていますが、同時に幸せになるために必要な生き抜く力の大切さも説かれています。
幼児教育はやっぱり大切
生き抜く力とは否認知能力ともよばれ、単純な勉強だけでは身に付かないものです。
誠実さや忍耐力など大切な能力ばかりですが特に大事なのが以下の二つ。
- 自制心
- やりぬく力
社会に出た後も成功や幸せをつかむために必要な能力ですよね。これらを身につけるために一番大切な期間が幼児期で、そのため幼児期の教育は非常に重要とのこと
実際社会に出た後は学力や学歴は入り口としては大切ですが、その後の人生を充実させるためには子供には人間力をつけさせてあげたいですね(*^^*)
まとめ

今回は学力の経済学という本からエビデンスからみた効果的な育児や教育というものを考えました。
「ご褒美でつって勉強させることは悪くない」など常識的には否定しがちな事柄や、「結果ではなく、努力を褒めること」「学力だけではなく人間性を育てるために幼児教育の大切さ」といった興味深いポイントが紹介されています。
教育論には正解はなく、それぞれの子にあった良い教育があると思います。多くの教育に関する情報が世の中には出回っており、○○がいいというのもあれば○○が悪いというのもあります。
それらの情報の背景もさまざまで、どのような情報が自分たちに合うのか、それを選んだ時のメリットとデメリットを考えながら、自分達の子供がどのような人生を歩んでいけるのか、その助けになるであろう教育法をこれからも学んでいきたいですね(*’▽’)